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鍼灸院神尾 コラム

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コラム

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東洋医学と西洋医学のそれぞれの強み

日本では明治維新以降、西洋医学が医療の中心である、というより、西洋医学が医療として採用され、東洋医学が追いやられているのが現状ですが、そんな中、西洋医学を頼るものの、結果が出ない、良くならない、どころか、病状が低調のまま固定化されている方が多いように感じます。

私は、西洋医学を全否定するつもりはありませんが、東洋医学に携わる鍼師としても、東洋医学と西洋医学にはそれぞれの強みがあって、医療を求める患者さんはそれを理解した上で、どう自分の病と向き合って、克服するのかを考えていただきたいと切に願います。

そこで、私なりの東洋医学と西洋医学のそれぞれの強みをまとめてみたいと思います。

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西洋医学の特徴


西洋医学の基本的な考え方というのは、科学が土台になっています。科学的であることが条件となります。科学で証明できないことは除外するという傾向があると思います。

科学的であるということは、物事を分けていき、よりミクロな世界に踏み込んでいくことになります。従って、体の全体の状態を診るというよりも、行き着く先は細胞であったり、遺伝子といったことになります。

また、脳外科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、眼科、耳鼻科、歯科、心療内科といったように、体をパーツ、パーツに分けていって、それぞれの専門分野に分けていく特徴があります。その専門分野同士で連携があれば良いですが、あまりそのような連携はみられないと私は思います。

西洋医学の強み


西洋医学は、強い刺激(衝撃)が短時間に身体に生じたことが原因になっている疾患に対して強みを発揮する医学だと私は思います。例えば、交通事故で強い衝撃が一瞬、体に生じたことによって、外傷を負ったり、骨折したり、出血が多量であったり、といった場合のことです。

このような場合、救命医療ともいえ、時間との勝負になります。このまま放っておいたら命を落とす可能性が高い状況です。この場合、西洋医学の手法で一命を取り留める、ということが西洋医学の得意な分野であると思います。

これが役立つ状況というのは、戦争なのではないでしょうか。明治時代に、日本も西洋医学を採用し、東洋医学を弾圧し、追いやった歴史がありますが、これも国が戦争に役立つ医療として西洋医学を採用した面もあったと思います。

また、心筋梗塞や脳梗塞といった疾患の場合も危険な一刻を争う状況でも、西洋医学によって一命を取り止めるケースは多々あると思います。ただ、その心筋梗塞や脳梗塞を引き起こした原因を辿っていくと、血液の性状に問題があったり、体質の改善が必要な場合もあり、そのような場合は、「強い刺激が短期間に体に生じた」とは言えないのではないかと思います。そのような原因を薬剤のみで根本治癒できることはないのではないかと思います。

薬剤の投与に関しては、症状を軽減させる、消失させる、ということは可能である場合があるかと思います。しかし、私の考えでは、症状というのは、体の反応が表に現れている状態ともいえ、症状は「悪」だとは思っていません。症状をなくせばいい、ということではなく、もっと根本的な原因に対してアプローチして、その結果、症状が消えていくというのが理想だと思います。

例えば、腰痛で、腰の深部に硬さがあって、それによって腰に痛みや痺れが生じている場合、その腰の深部の硬さを緩めることができなければ、本当の意味での完治とはなりません。しかし、その腰痛に痛み止めの薬を服用したところで、痛み止めの薬は、脳につながる痛みの伝導路を伝わる電気信号を遮断することをしているだけなので、腰の深部の硬さが重症であればあるほど、硬さが緩まることはほぼなく、薬の効果が切れれば、再び痛みが現れることは多々あると思います。

また、風邪をひいて、発熱がある場合、発熱というのは、自己の免疫力を高めるために体温を上げている現象といえるので、解熱剤で体温を強制的に下げてしまうことは、免疫力が高まらず、長患いになってしまうことも考えられます。

このような意味でも、西洋医学は症状に対処する「対処療法」という面がかなりあると思います。今ある症状をなんとか抑えて、凌ぐという考えは必要なことも多くあると思いますが、それだけで完治することが困難であったり、逆にうまくいかず、長患いになったり、悪化することもあり得ることは認識しておいたほうがいいかと思います。

東洋医学の特徴


東洋医学の基本的な考え方は、身体は全体で一つであり、それぞれの内臓、器官、組織といったものが関係し合っていて、調和が保たれていることが健康であるとされます。

その調和が保たれれば、あとは自己のもつ自然治癒力が充分に働いて、病を完治してくれる、という考え方となります。

従って、治療は全体のバランスを整える、滞っている血液や気の流れを改善させることによって、自然治癒力がフルに働いてくれる体内環境の実現を目指すことになります。

東洋医学の強み


ここまで、西洋医学、東洋医学、それぞれの特徴をみていただいて、ご理解いただけるかと思うのですが、それぞれが相反する面が多いということになり、東洋医学の強みというのは、西洋医学の強みと相反するというか、逆とも言えるかもしれません。

従って、東洋医学の強みは、弱い刺激が長期間に渡って、体に影響したことが原因となっている疾患に対して、効果が発揮しやすいと言えると思います。

言い換えれば、慢性的な症状に対して効果的であるということです。慢性的な疾患は、病の原因が一瞬の衝撃を受けるようなことではなく、微量な刺激がじわじわと何年、何十年とかけて、形作られるものとなります。

治療としては、体質改善といったことが基本的に必要なことになります。これは、放っておいたら、直ぐに命に関わるといったことではありませんが、本人も気がつかず、気がついた時は重症であったりすることもあるわけです。

東洋医学にとって、お手上げな状況は、一刻を争う救命医療が必要な場面であり、早急に今、目の前にある症状を取り去らないと危険であるといった場合だと思います。戦争で、地雷を踏んで、足がもげてしまった、内臓が飛び出てしまった、といった場合にできることはないのではないか、ということです。

どう選択するか


患者さんの立場であれば、ご自身の抱える疾患や症状によって、どのような医療を選択するかは、最後は医師でもなく、私のような鍼師でもなく、ご家族でも親戚でもなく、友人でもなく、ご自身の決断となります。

その決断をするにあたり、上記のような西洋医学と東洋医学の違いや強みといったことを考えた上で、決断していただけたらと願います。

今回は東洋医学と西洋医学のそれぞれの強み、と題してきましたが、「強み」がつかめれば、「弱み」も見えてくるかと思います。

また、「強い刺激、弱い刺激」「短期間、長期間」といったことが基準となるということでしたが、疾患や症状によっては、どちらかはっきりしない、何とも言えない、といったこともあるかもしれません。それでも、大まかな基準として、参考にしていただけたら幸いです。


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カテゴリー: 鍼治療について

雑司ヶ谷参り

12月20日は、私の鍼の師匠にあたる先生の命日です。今年で10回忌となり、20日にうかがいたかったですが仕事でしたので、翌日に先生が眠る東京都豊島区にある雑司ヶ谷霊園を訪ねました。

雑司ヶ谷は、私が2012年から5年間、鍼灸院を開院していた場所でもあります。

私が雑司ヶ谷で開院したのも、私の先生の強い勧めがあり、先生は「雑司ヶ谷がいいと思うよ」と仰って、先生から他の町の名前が出ることはありませんでした。

雑司ヶ谷は、鬼子母神の境内を中心とした歴史ある、都電が走る下町風情の残る落ち着いた町です。そのような町が私も好きでしたし、私が雑司ヶ谷で鍼灸院を開院する前までは、雑司ヶ谷の隣町である東池袋で、他の鍼灸師の方と共同で運営していた鍼灸院に所属していたため、東池袋に来院されていた患者さんにとって、雑司ヶ谷であれば、無理なく通院していただけるのではないか、という想いもあって、私としても雑司ヶ谷は開院するには理想的な町でした。

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先生からは、ことあるごとに雑司ヶ谷での開院を勧めていただいていましたが、私がなかなか決断できず、先生に最初に雑司ヶ谷での開院を勧められてから1年後に決断し、物件探しを始めました。物件についてや細かなことまで、その都度、先生に相談させていただき、徐々に具体的な形となり、2012年10月に開院することができました。

私が物件を契約したのは8月でしたが、翌月に先生は入院され、12月にお亡くなりになりました。10月に開院できたことを報告させていただき、その時に電話で話したのが先生とは最後になってしまいました。

「神尾くんが開院したら、お祝い持って行くからさ」と仰っていただいていたのですが、それは実現しませんでした。

私が雑司ヶ谷での開院を決断した時期は、先生は治療院で変わらず鍼治療もされていましたので、私としては、先生に見守っていただけるならば、自分でも鍼灸院を開院できるのではないか、と思っていました。

それほど先生の存在が私にとっては大きなものでした。私が開院を決断するのが、あと2ヶ月、3ヶ月、遅かったら、私は雑司ヶ谷で開院することはできなかったのではないか、と今でも思っています。

それだけ先生が推してくださった雑司ヶ谷での鍼灸院でしたが、私の家族のことや実家のことなどがあって、雑司ヶ谷の鍼灸院は5年間で終了し、現在の埼玉県所沢市に移転する形となっています。 雑司ヶ谷での5年間も患者さんに恵まれ、鍼治療に没頭した充実した日々を送らせていただきました。

先生は、「鍼治療とは、10年続けて一つの形になって、また次の10年で変化したり洗練されていったりと、そういったものだから、10年一区切りというつもりで、継続していきなさい」と仰っていました。

私が鍼灸師となってから13年が経ち、私が雑司ヶ谷で開院してから、来年の10月で10年が経とうとしています。

先生の仰る「一つの形」ができつつあるのか、自分ではわかりません。それでも、先生の鍼を目指すと志してきたので、今後も鍼治療を通して、日々課題を克服して、成長していきたいと思っています。

そんなことをお参りしながら考え、先生の言葉を思い出した日に今日はなりました。

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カテゴリー: 鍼治療について

治療の引き出し

鍼灸師になるには、3年間の鍼灸学校を卒業しなければならないのですが、その鍼灸学校の教員や卒業後に鍼灸師の先輩にあたる方々によく言われたことがありました。

それは、

「患者さんにはいろいろなタイプがあるのだから、治療の方法として複数できて、自分の治療の引き出しをできるだけ多く持てるようにしたほうがいい。」

というような内容です。

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最初の、「患者さんにはいろいろなタイプがあるのだから」というのは、その通りだと思います。同じようなタイプの患者さんはいても、全く同じという患者さんはいないのではないか、というのが私の実感です。

ところが、その後の「治療の方法として複数できて、自分の治療の引き出しをできるだけ多く持てるようにしたほうがいい。」というのは、一見、正論であるように思えますが、私としては今までの経験上、同意できません。

この「複数の治療法」というのは、鍼灸にプラスして整体、気孔、マッサージ、指圧、温熱療法、カイロプラクティック…等々、様々な治療法を鍼灸にプラスする、という意味もありますし、鍼灸治療には無数の治療方法があり、鍼灸の中でも複数、組み合わせる、といった意味もあるかと思います。

いずれにせよ、「複数の治療法」ができると、患者さん一人一人に合った治療法が選択できるから、例えば、鍼灸で通用しない、結果が出ない患者さんが現れた時は、指圧をやってみる、とか、最初から複数の治療法を試していく、といったことがあるかと思います。

でも、本当に「複数の治療法」ができると、患者さんのお役に立てるような結果につながるでしょうか。

私は治療の際、鍼と灸どころか、鍼しか使いません。しかも、石坂流鍼術という鍼の方法しかしません。

では、患者さんにはいろいろなタイプがいらっしゃるわけですから、どんなタイプの患者さんが来られても、石坂流鍼術の鍼だけで常に通用するのか、ということになりますが、私の鍼でなかなか効果が出ない、といった患者さんが過去にもいたことは事実として、あります。

私は、そのような時、もし、私が石坂流鍼術の鍼以外のなんらかの他の治療法ができたら、その他の治療法をその患者さんに試すと思います。

私の考えでは、そうしたら、自分の鍼の成長はそこで止まってしまうということだと思います。つまり、他の治療法に逃げる、ということだと思います。

たとえ、通用しない患者さんを目の前にしたとしても、どうにか自分の鍼で、患者さんが納得していただける、喜んでいただける鍼をするには、どう工夫すればいいのか、を考えて考え抜いて、微かなヒントというか、突破口を見出し、毎回、その患者さんに鍼で挑む、ということを私は鍼灸師になってから繰り返して継続してきたと思っています。

それでもうまくいかなかった経験もありますし、悩んで悩みぬいて、それでもうまくいかず、落ち込んだこともありましたし、未だに、日々、患者さんに鍛えていただいている感覚があります。それでも、他の治療法に逃げることはしません。

鍼がダメなら、灸で、それでもダメなら、指圧にしてみよう、としたら、その時点で、鍼の成長はそこまでで、鍼の実力が伸びることはないのではないでしょうか。

私の鍼の師匠は私に、

「鍼の技術というものは、10年続けて、やっと一つの形になる。そして、その次の10年でまた違う形となる。それを続けていきなさい。」

と、よく言われました。

これは、鍼の技術というのは奥深いもので、1年やった、2年やった程度では話しにならず、10年で一区切り、といった姿勢で、鍼に取り組みなさい、という意味があるのだと思います。

それに加え、別の観点からすれば、灸にしても、指圧にしても、整体にしても、鍼治療同様、10年一区切り、といった長い時間をかけて形にしていく技術であって、そのような様々な治療方法を複数、取り組んだとしたら、複数のそれぞれの治療法が一つの形になるだけでも、鍼も10年、灸も10年、指圧も10年、整体も10年、となれば、全てが一つの形になるまでですら、何十年、何百年かかってしまうのではないか、と思ってしまいます。広く浅くなってしまったら、逆に遠回りになってしまうのではないかと思います。

それならば、逃げ場のない苦しい状況があったとしても、「鍼」という一つの技術に全精力を注ぎ込んで、鍼に数十年かけ、一つの技術を奥深く探求するほうが、結果的には、患者さんのお役に立てる技術に近づけるのではないか、というのが私の考えです。

私の一人よがりのようになってはならないとは思いますが、「鍼」という技術を駆使して、臨機応変に患者さんに対応できたらと思っています。

「治療の引き出しは、自分がこれだと思う確信の持てる引き出しが一つあれば良いのでは。」

というのが私の考えです。

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臓腑(ぞうふ)とは? ~東洋医学の基本的な考え方の一つ~

「五臓六腑に染み渡る…」

とは、「内臓全体に染み込むように美味しく感じられる」という表現ですが、東洋医学では「六臓六腑」とされます。この「六臓六腑」のことを「臓腑」と呼びます。

「臓腑」が様々な要因で変調をきたすと、病気となるとされます。臓腑の「臓」は、中身がつまった実質臓器とされ、「腑」は管状や袋状といった中身が空洞の中空臓器とされます。「臓腑」は以下のようになります。

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六臓六腑の表

この「六臓六腑」は、内臓器そのものと、それぞれの内臓の機能を含めたことをひっくるめたものを指します。

西洋医学で言われている、例えば胃なら臓器である胃のことだけを意味します。胃の機能のことまで「胃」という言葉には含まれないかと思います。

ちょっと話がわかりにくいかもしれませんが、内臓の機能を含めたことというのは、「六臓六腑」のそれぞれが以下のような機能を持っているとされ、臓器そのものに加え、機能や働き、つながりといったことが含まれています。以下は全ての機能や働きではないですが、わかりやすいものだけを並べてみました。

六臓六腑それぞれの特徴

肝(かん)
 ・魂を臓する。
 ・判断力や計画性などの精神活動を支配する。
 ・蔵血を司る。
 ・筋肉を司る。
 ・爪を司る。
 ・目につながる。
 ・怒り過ぎると肝を傷める。
 ・外邪を防ぐ。

心(しん)
 ・神を臓する。
 ・六臓六腑を統括し、知覚・記憶・思考・意識・判断などの精神活動の支配、
  六臓六腑の調和を保つ。
 ・血脈を司る。
 ・脈を介して血を全身にくまなく運行させる。身体諸器官の活動を支える。
 ・舌につながっている。
 ・喜び過ぎると心を傷める。

脾(ひ)
 ・営を臓する。
 ・運化(水穀を消化し、後天の精や津液、血・営衛などを吸収して全身に送る
  作用)を司る。
 ・消化・吸収を行う。
 ・肌肉を司る。
 ・口につながる。
 ・津液の生成を司る。
 ・思い過ぎると心を傷める。

肺(はい)
 ・気を司る。
 ・呼吸を司る。
 ・通調水道(脾の働きによって胃から上部に運ばれた水分を全身に散布する
  作用)を司る。
 ・皮毛を司る。汗腺を調節する。
 ・鼻につながる。
 ・憂鬱になり過ぎると肺を傷める。

腎(じん)
 ・精を蔵する。
 ・成長・発育・生殖・老化などを司る。
 ・水を司る。
 ・水分代謝を支配する。
 ・骨を司る。
 ・耳につながる。
 ・恐れ過ぎると腎を傷める。

心包(しんぽう)
 ・心を保護する。
 ・実体のない架空の臓器。

胆(たん)
 ・決断や勇気を司る。
 ・胆汁を蔵する。

小腸(しょうちょう)
 ・胃から送られてきた糟粕(飲食物のかす)を受け取り、内容物をさらに
  消化し、澄んだ清いものと濁ったものに分け、清いものは脾を通して全身へ
  送り、濁ったものは蘭門で水分と固形分に分けられ、水分は膀胱へ、
  固形物は大腸へ送られる。

胃(い)
 ・脾とともに消化吸収を行う。
 ・水穀の受納・腐熟を司る。
 ・通降を司る。
 ・内容物を小腸・大腸に送り、新たな飲食物を受け入れる。

大腸(だいちょう)
 ・大便を肛門から排泄する。
 ・「伝導の官」と呼ばれる。

膀胱(ぼうこう)
 ・貯尿・排尿作用を行う。
 ・「州都の官」と呼ばれる。

三焦(さんしょう)
 ・気が昇降出入する通路。
 ・水分の運行の通路。
 ・体温調節作用、気血津液の調整作用、輸瀉作用の三つを行う。

 三焦は上焦、中焦、下焦と分けられる。

 ・上焦は横隔膜より上部の機能を指す。働きは清気を取り入れ血と共に全身に
  巡らせる。衛気・津液を全身の皮膚に巡らせ皮膚に潤いを与えて、体温調節を
  行う。

 ・中焦は横隔膜から臍(へそ)までの間の機能を指す。働きは消化・吸収を
  行い、そこから生じる精気を、営気と血とし、経絡を介して全身に巡らせる。

 ・下焦は臍から下部の機能を指す。働きは消化した糟粕を大便、水分を
  尿として排出する。

上記をご覧になって、六臓六腑それぞれが持つ、だいたいのイメージをつかんでいただけたらと思いました。

西洋医学の臓器で言われていることとほとんど同じことや、メンタル的なことを臓腑が司っていたりと東洋医学独特のものもあったかと思います。

例えば、肝では、「判断力や計画性などの精神活動を支配する。」とありますが、肝の働きが鈍くなると、「物事の判断力や計画性までもが鈍くなる」ということを意味します。

臓腑は「五行説」という思想に当てはめられる

臓腑は、五行説と呼ばれる思想に当てはめられます。この五行説とは、自然界における万物は木・火・土・金・水の5つの元素から成り立つという考え方です。

以下の図は臓腑を五行説に当てはめた図となります。この場合、六臓六腑ではなく、五臓五腑となり、心包と三焦はありません。

五行関係図

上の図の中に「相生(そうせい)関係」と「相克(そうこく)関係」があります。

「相生」とは、「生み出す関係」であり、これはわかりやすいかと思います。

「相克」とは、「相克」の「克」とは「勝つ」の意味であり、それぞれの臓腑が勝ったり負けたりして権勢し合っているような関係といえます。

「相生」ばかりだと、どんどん全体が増えてしまっていくようですが、「相克」の関係性があるために、どんどん増えてしまうのを抑制しているともいえるようです。

このように、東洋医学では人体はそれぞれのパーツとパーツが単独で機能しているということではなく、「臓腑を当てはめた五行説」の考え方に代表されるように、それぞれが連動し関係性を保ちながら機能しているとされます。

弱った臓腑が元気を取り戻し全体のバランスが整えば、その患者さんの本来持ち合わせる治癒力が充分に発揮され、病が消失していくことになります。

まとめますと…

臓腑の「臓」とは実の詰まった実質臓器のことであり、肝・心・脾・肺・腎・心包があり、「腑」とは管状や袋状の中空臓器のことであり、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦となります。また、このそれぞれの臓腑は、臓器そのものとその臓器の働きなどが含まれるとされます。

それぞれの臓腑の特徴も見ていただきました。

この臓腑は、万物は木・火・土・金・水の5つの元素から成り立つとされる「五行説」という思想に当てはめられ、東洋医学の基礎的な考えとなっています。

今までのコラムでも今回のコラムに似た内容もあったかと思いますが、臓腑についてまとめられたものではなかったので、今回このようなコラムにさせていただきました。

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「自分の鍼治療を説明させてください」
 第3回 ~西洋医学、解剖学的な説明。神経の分布。~

今回も、前回から引き続きまして、「自分の鍼治療を説明させてください」シリーズの第3回として、自分の鍼治療を西洋医学の観点から説明させていただけたらと思います。

「第1回 ~鍼灸治療のやり方は様々で、多くの流派がある~」

「第2回 ~東洋医学的な説明。人体は全体で一つ。六臓六腑と兪穴~」

西洋医学は主に、解剖学、生理学、病理学といった分野で構成されていて、解剖学は人体の構造について、生理学とは病気ではない正常な状態の人体の働きについて、病理学とは生理ではない病的な状態について、となります。

今回は、解剖学から自分の鍼治療を説明させていただけたらと思います。

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解剖学における神経

解剖学とは、人体の構造についてとなりますが、神経の流れが自分の鍼治療と深く関係していると考えられています。

神経は体内を行き渡り、脳から組織、組織から脳への信号の通り道ということになります。

手の指先で何か触れたら、その感触が電気信号となり、神経の中を通り、脳にその信号が達し、脳で「手に何か触れた」と判断します。

脳から脊椎の中を通って、分岐して全身に神経は走行し、図としては以下のようになります。

脊髄神経の走行


この神経は脊柱から左右に31対が出ており、臓器や組織につながります。

自律神経の分布


兪穴(ゆけつ)と神経の走行

前回のコラム第2回の中で、自分の鍼治療は、臓腑を癒す「兪穴(ゆけつ)」と呼ばれるツボの治療することで、六臓六腑のバランスを整え、それが患者さんご自身が元々持ち備えている治癒力を充分に発揮できる体内環境を作り出すことになる、ということをお話しさせていただきました。

この「兪穴」は以下の図のように位置しています。

背部兪穴


この兪穴と神経の走行に関連があるとされ、これを説明するには、「ヘッド氏帯」と呼ばれる、ある臓器に疾患がある場合、皮膚のある領域に異常が起きる、という理論を用いることができるかと思います。

「ヘッド氏帯」と鍼治療

「ヘッド氏帯」は、内臓と皮膚には回路があり、神経を通して、やり取りをしていて、内臓に異常があれば、皮膚にも異常が現れるということです。また、その逆に皮膚を刺激すれば、内臓に刺激が伝わるということになります。

これを鍼治療に当てはめて考えると、鍼は皮膚に刺激を与えるものであり、その刺激が内臓機能を整えることにつながっていると考えられています。

例えば、胃に症状がある場合、胃兪と呼ばれるツボは第12胸椎付近にあるとされますが、その第12胸椎の皮膚上に何らかの異常が現れるということになります。

その異常というのは、硬さ、張り、盛り上がり、凹みなど触れて見つけるものや、皮膚の色の異常などのように見てわかるものもあります。

そのような異常をツボとして、鍼をしていくわけですが、的確にツボをとらえ、適度な刺激を与えることで、例えば、第12胸椎付近の異常をツボとして鍼をすれば、その刺激は胃に届き、胃の機能が整う、ということになります。

まとめますと…

馴染みのない言葉も出てきて、わかりにくいかと思いますが、以下のようにまとめられるかと思います。

・神経は脳からスタートし、背骨や骨盤の中を通り、背骨や骨盤の中央から左右に枝分かれし、神経は臓器や組織につながっている。

・臓器と皮膚は連動していて、臓器に異常があれば、皮膚上にも異常が現れるという「ヘッド氏帯」と呼ばれる理論がある。

・鍼治療では、皮膚上に現れた異常をツボとして、そのツボに鍼をする。それにより、鍼の刺激が内臓に届き、その内臓を癒し、内臓機能を整えると考えられている。

今回、私が最も言いたかったことは、鍼治療は長い歴史の中で形作られ、独自の見解を持っていますが、上記のように、科学をベースとした西洋医学の分野である解剖学の視点からも、鍼治療がなぜ効果があるのか、という説明ができる、ということです。

もちろん、物事は科学で全てが説明できるものではないのと同様に、鍼治療を科学できれいに説明できないこともありますが、一つの見方として、今回のような説明もできるのではないか、という試みでした。

私個人としては、鍼治療の科学で説明できない部分に魅力を感じ、可能性を追求していきたいという想いがあります。

3回に渡り、自分の鍼治療を説明するにはどうしたら良いかを考えながら、記事を書かせていただきました。今後もいろいろな観点から鍼治療について説明できることがあれば、記事にさせていただけたらと思っています。

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カテゴリー: 鍼治療について

「自分の鍼治療を説明させてください」
 第2回~東洋医学的な説明。人体は全体で一つ。六臓六腑と兪穴~

第1回 ~鍼灸治療のやり方は様々で、多くの流派がある~」 に引き続きまして、第2回として、自分の鍼治療を東洋医学の観点から説明させていただけたらと思います。

第1回の最後に、鍼灸治療は様々な技術、考え方がありますが、東洋医学の考え方が流派を問わず、共通しているのではないか、ということでしたので、その続きとして、まとめてみたいと思います。

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鍼灸師にとって共通の考え方である東洋医学の考え方

それでは、鍼灸師にとって共通の考え方である東洋医学の考え方とはどのような考え方なのでしょうか。

東洋医学の中にも様々な理論がありますが、代表的なものを挙げるならば、「人体は全体で一つである」ということに思えます。

西洋医学では、循環器内科、消化器内科、神経内科、呼吸器内科、心療内科、腎臓内科、心臓内科、口腔内科など、内科に限っても、これだけ分割します。

私の理解では、例えば、心臓の不調は腎臓の機能低下が原因とみなすので、心臓内科と腎臓内科の医師が連携して治療を行なう、といったことは西洋医学の病院では起こらないと思います。西洋医学では、心臓の症状に対して心臓内科が担当し、腎臓の症状に対しては腎臓内科が担当する、といったことが通常だと思います。

西洋医学のベースは科学です。科学は細分化して考えます。人体を細分化していくと、たどり着くのは細胞、遺伝子といった世界なのだと思います。ミクロの世界ですね。

東洋医学では、人体の基本的な構成要素として、気、熱、水、血液が六臓六腑において活動することによって、正常に生命活動が営まれるとされ、気、熱、水、血液の働きや流れが阻害され、六臓六腑のバランスが崩れることで、体調の不調が現れ病となるとされます。

この六臓六腑の「臓」とは中身のつまった臓器のことで、肝、心、脾、肺、腎となり、「腑」とは袋状や管状の臓器のことで、胆、小腸、胃、大腸、膀胱となります。これに心包(しんぽう)と三焦(さんしょう)を加えたものが六臓六腑となります。心包と三焦は東洋医学特有の臓腑となりますが、心包は心を守る働き、三焦は水を巡らせる働きがあります。

また、東洋医学でいう例えば、「肝」は西洋医学の「肝臓」とイコールか?と問われれば、イコールではありません。「肝臓」といえば臓器そのものを指すと思いますが、東洋医学の「肝」とは、臓器だけでなく、肝の働き、また肝には感情や精神にも働きかける機能があるとされ、単に臓器だけを指すものではなく、「肝」にまつわる機能全体を指すとされます。

下図が六臓六腑を表しています。

六臓六腑の表


この六臓六腑の中の五臓五腑それぞれが常に関係性を保っているという考え方が下の図の「五行の相生(そうせい)と相克(そうこく)」と呼ばれる考え方となります。

五行関係図

「相生(そうせい)」とは、「生み出す関係」であり、これはわかりやすいかと思います。

「相克(そうこく)」のほうが比較的わかりにくいのですが、「相克」の「克」とは「勝つ」の意味であり、それぞれの臓腑が勝ったり負けたりして権勢し合っているような関係といえます。

「相生」ばかりだと、どんどん全体が増えてしまっていくようですが、「相克」の関係性があるために、どんどん増えてしまうのを抑制しているともいえるようです。

このように、東洋医学では人体はそれぞれのパーツとパーツが単独で機能しているということではなく、「臓腑」の考え方に代表されるように、それぞれが連動し関係性を保ちながら機能しているとされます。

弱った臓腑が元気を取り戻し全体のバランスが整えば、その患者さんの本来持ち合わせる治癒力が充分に発揮され、病が消失していくことになります。

病があったり、体調が優れない方は、バランスを失った身体が本来持つ治癒力を発揮できない状態にあるといえます。従って、病は患者さんの持つ治癒力が治すのであって、鍼灸治療は治癒力が充分発揮できる体内の環境を作ることが目的となるといえます。

このような考え方は、流派を問わず、鍼灸治療の根底にあると私は思います。

私の流派が重視していること

私の流派においても、重視していることは、上記の「人体は全体で一つである」の考え方に基づき、どの臓腑が機能低下しているかを見極め、その臓腑を癒すことで、全体のバランスを整えることだと思います。

そこで、私の流派では、背中、腰、骨盤といった個所に存在する「兪穴(ゆけつ)」が臓腑を直接癒すと考え、兪穴の治療を重視いたします。

兪穴は下の図のように位置します。

背部兪穴


上の図のように、臓腑に深く関係している兪穴は「臓腑名」+「兪」と表され、「兪穴」の「兪」という漢字は、「癒」の原型といわれ、文字通り、「兪穴」は「その臓腑を癒すツボ」となります。心包兪はありませんが、心包の兪穴は厥陰兪(けついんゆ)となります。

また、「兪穴」はその臓器が位置する高さに一致していることが多く、例えば、「心兪」は心臓の位置の真裏に近い所に位置しますが、「兪穴」の位置は臓器の位置に一致させたというより、長い鍼灸の歴史の中で、経験上どの位置がどの臓腑を癒し、最も効果があるか、といったことの積み重ねによって、「兪穴」の位置が特定されていったのだと思います。

他の流派によっては、この「臓腑」を癒すのに、「兪穴」を使うのではなく、手の肘~手首、足の膝~足首などに位置するツボを使う方法があります。手や足にはその臓腑につながる経絡というツボの並びがあり、その経絡を使って臓腑のバランスを取ろうとする手法があります。

私の流派では、手や足のツボを使うことはいわば遠隔操作であり、「兪穴」は、より直接的に臓腑に働きかけると考えることから、「兪穴」を積極的に使っていくという治療方法に行き着いたのではと私は思っています。

まとめますと…

長くなりましたが、まとめますと以下のようになるかと思います。

鍼治療の説明 まとめ


次回の第3回は、この「兪穴」は西洋医学的にも説明ができる側面がありますので、そのような説明ができたらと思います。
「自分の鍼治療を説明させてください」
 第3回 ~西洋医学、解剖学的な説明。神経の分布。~


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「自分の鍼治療を説明させてください」
 第1回 ~鍼灸治療のやり方は様々で、多くの流派がある~

日本の国民の鍼灸治療を受けたことがある人の割合は7%程度と聞きます。残念ながら、現代における鍼治療はそれだけ一般的ではありません。一般的ではないことを説明するのは難しいことです。

それでも、患者さんに納得していただいて治療に取り組んでいただくには、鍼治療についてご理解していただけるよう、説明する努力が必要であると考えています。

今回は以下の3つに沿って、説明できたらと思いました。

鍼治療の説明

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鍼灸治療のやり方は様々で、多くの流派がある

「えっ、鍼灸に流派なんてあるんですか?」

と患者さんに言われることがあります。

昔から続く流派のほうが珍しくなってきている印象ですが、現在も多くの流派が存在し、戦後に組織としてできた比較的新しい流派のほうが鍼灸の世界としては一般的に思えます。

鍼灸師になるには、鍼灸学校を3年間かけて卒業し、国家試験に合格しなければなりません。鍼灸学校でも実技は習いますが、残念なことに鍼灸学校で学んだ実技が卒業後にプロとして通用するかといわれれば、それは難しいこととなっています。多くの鍼灸師は鍼灸学校を卒業してから、本格的な修行が始まるといえるのではないでしょうか。

私の場合も、鍼灸学校を卒業してから、修行の道が始まったわけですが、今思えば、最初の時期は右も左もわからないながら激流に飲み込まれ、自分が気がつかないまま本物の道からは遠く逸れていってしまったり、大変な時期もありました。

それでも、最後に一生をかけてこの先生の鍼を目指そうと思える師に出会えたことで、奇跡的に救われ、今の自分があると思っています。

患者さんから、

「鍼って打っちゃいけない所ってあるんですか?」

と、聞かれることがあります。

その答えとしては、常識的なところであれば、鍼をしてはいけないところはない、とされます。

常識的というのは、例えば、眼球に鍼を刺す、といったことは非常識、ということで、頭、顔、首、肩、腕、背中、腰、骨盤、足といったように全身に渡って、どこを鍼してはいけない、ということはありません。

上記のように、常識的なところなら、どこに鍼や灸をしても良いとなれば、極端には、頭の先から足の先まで全身をまんべんなく鍼や灸をするということでも良いのかもしれません。

でも、それだけ鍼や灸をする必要は無く、どこを重視するのか、何を優先するのか、といったことが鍼灸の長い歴史の中で、無駄なことが削ぎ落とされ、残ってきたことがあるのだと思います。

その何を重視するのか、が流派によって異なり、それがそれぞれの流派の治療の特徴となっているといえると思います。

鍼治療の説明 木火土金水流派によって、脈を整えることを重視する、お腹の硬さを取り去ることを重視する、腰部や骨盤を整えることを重視するなど、様々です。また、実際に鍼や灸をする場所も、肘から手先、膝から足先を重視するやり方や、お腹や背中、腰を主に治療するなど、それも様々です。

どれが正解か、ということは誰にも答えられないことなのかもしれませんが、山登りに例えるなら、患者さんに良くなって元気になってもらいたい、ということはどの流派の鍼灸師にとっても共通の山頂であり、鍼灸師はそれぞれの技術や考え方によって、それぞれの山登りのルートで山頂を目指すといったことに私は思います。

鍼灸師によっては、直線的に山頂を目指すルートを選ぶかもしれませんし、迂回しながらゆっくり山頂を目指したりとするのかもしれません。

ただし、山頂を目指すにあたって、鍼灸師には共通の考え方のようなものがあるように思えます。それは、東洋哲学をベースとした東洋医学の考え方です。その東洋医学の解釈などはそれぞれの流派によって差異はあるかとは思いますが、基本的なとらえ方としては、共通しているといえるのではないでしょうか。

次回は、第2回として、東洋医学の共通的な考え方と私の流派の鍼についての説明ができたらと思っています。
「自分の鍼治療を説明させてください」
 第2回 ~東洋医学的な説明。人体は全体で一つ。六臓六腑と兪穴~


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健康保険を利用して鍼灸治療は受けられるのか?

健康保険を利用して鍼灸治療は受けられるのか最近、数名の患者さんから健康保険を利用して鍼灸治療が受けれるかどうか、をお問合せいただきました。

鍼灸治療では、健康保険を利用することができます。

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患者さんの利点としては、1回の施術につき、は1,057円(平成28年2月現在)を健康保険組合が負担してくれるので、通常の5千円の治療費の場合、患者さんのご負担額は3,943円(平成28年2月現在)となることです。ただし、患者さんのほうで、書類など数点用意していただくことなどがございますので、最初だけお手数をおかけするかと思います。書類が揃い、健康保険組合のほうで受理されれば、書類は毎月一度、鍼灸師のほうで作成しますので、患者さんのほうではほとんど手間はかかりません。

制度として、鍼灸治療の健康保険の利用は、一般の病院等での健康保険の利用と異なる点が以下のようにございますので、それを踏まえた上で、ご利用いただけたらと思います。

一般の病院等での健康保険と異なる点

・ 医師による同意書が必要となります。医師による鍼灸治療を受けても良い、という同意が必要となり、医師に同意書を書いてもらう必要があります。同意書の作成の費用は100円~3千円程度と病院によって異なるようです。

・ 3ヶ月間、鍼灸治療を受診されない場合、再度、医師の同意書が必要となります。

・ 健康保険を利用する場合、1回の施術につき保険組合が支払う金額は1,057円(平成28年2月現在)となり、5千円の治療費の場合、患者さんのご負担額は3,943円(平成28年2月現在)となります。

・ 月に一度、私のほうで、保険請求のための書類を作成し、患者さんに手渡しますので、それをご自宅に持ち帰り、所定の個所に患者さんが捺印をし、患者さんご自身で郵送していただきます。宛先を記した封筒もこちらで用意いたします。

・ 書類が健康保険組合で受理されると、患者さんが指定した患者さんの銀行口座に1ヶ月分の健康保険組合が支払う分が振り込まれます。受理されてから振り込まれるまでに約3ヶ月かかります。

健康保険を利用する手続きの手順

1. 患者さんご自身が医師に同意書の作成を依頼していただきます。

2. 医師の同意書、保険証のコピー1部、患者さんが指定される銀行口座情報の3点を鍼灸師にお渡しください。同意書の用紙と銀行口座情報の用紙はこちらで用意いたします。

3. 月のはじめに、前月の治療分の健康保険組合に送る書類を私のほうで作成し、書類一式を患者さんにお渡しいたしますので、所定の個所に患者さんの捺印をされ、健康保険組合宛に郵送してください。

4. 健康保険組合が書類を受理してから約3ヶ月後に、患者さんが指定された銀行口座に健康保険が負担する額が振り込まれます。

以上が大まかなご案内となります。細かなことは上記に関してもありますが、ウェブ上では誤解を招くこともあるかと思いますので、実際に健康保険を利用して鍼灸治療を受けてみたいとご希望される方、ご相談等は、下のお問合せページからお問合せいただけたらと思います。
鍼灸院 鍼神尾 お問合せページ

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ここちよい針のシゲキ

先日、私と同世代の患者さんがこう仰っていました。

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「鍼治療に行く日が早く来ないか待ち遠しくて、PUFFYの愛のしるしを歌っちゃいましたよ~」

「でも、あれは鍼じゃなくて針ですけどね~」

最初、何を言われているのかわからなかったのですが、「愛のしるし」という曲の歌詞の出だしに次のフレーズがあるようです。

「ヤワなハートがしびれる ここちよい針のシゲキ」

PUFFYの曲の歌詞はおもしろいものが多いですが、これには、意味があるのかないのか、どうなんでしょう…

しばらく私のテーマ曲にしてみようかと思います。



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鍼灸の鍼と注射針の違い

「はり」と聞くと、病院での採血の時の注射針や歯科医院での麻酔の注射針をイメージされる方が多いかと思います。もちろん、私も経験がありますが、とにかく痛いですね。

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まず、漢字としては、鍼灸は「鍼」を使い、注射針は「針」を使います。裁縫の場合も「針」ですね。語源には諸説あるようで、はっきりしたことはわかりません。漢字の「鍼」に関しては、過去のコラムに書かせていただきました。

はりは、金と咸
https://harikanwo.com/column/index.php?e=7

今回は、鍼灸の「鍼」と注射針の「針」は何が違うのか、についてです。

太さがどのぐらい違うのか

注射針は薬剤、つまり液体を静脈に入れるのが目的ですので、中が管状になっていることから、それなりの太さになってしまう、ということです。

注射針の太さは、直径0.4~1.2mmとあるようです。

テルモ注射針
https://www.terumo.co.jp/medical/equipment/me11.html

それに対して、私が使用する鍼の太さは、直径0.16~0.34mmです。私が使用する最も太い鍼よりも注射針の最も細い針のほうが太いとなりますね。

ちなみに一般的に髪の毛の太さは、直径0.05~0.15mmといわれています。

先端について

注射針は皮膚に刺してから静脈の中に入り、薬剤を静脈内に流し入れるということになりますので、注射針が静脈を破るために、先端が鋭利に尖っています。静脈を破るため、注射針を抜くと出血します。

注射針の先端拡大写真


鍼と注射針の先端の違い


上のイラストのように、鍼灸の鍼は先端が丸まっています。私が使用する鍼は一般の鍼よりもさらに先端を丸めています。そのため、血管や神経は鍼を避けてくれるとされますので、血管を破って出血するようなことはまずありません。

ただし、瘀血(おけつ)と呼ばれる、毛細血管と毛細血管との間で、静脈に入らずに回収されずに漂っている血液が鍼を抜いたタイミングで一緒に出てくることがあります。この瘀血は冷えや痛みの原因ともされ、瘀血を体外に出すことも鍼の効果であるといえます。瘀血がしっかりと体外に出たほうが患者さんはスッキリされ、痛みなどから解放されることが多くあります。瘀血の量は、ごく少量で、直径1~2ミリ程度にジワっと出て、それで終わりです。包丁で指を切った時のように、垂れるほどだったり、しばらく止まらない、といったようなものではありません。

鍼と針は別物

上記のように、まず太さがかなり違うということと、先端の構造が違う、ということがいえます。注射針の先端の写真を見ると鍼灸の鍼とは全く別物に思えます。

また、鍼灸の鍼は注射針に比べ細いこと、それに加え、血管を傷つけにくい丸まった構造であることは、人体に刺さった時に、ほとんど痛みがない、といえます。では、鍼治療において、鍼が刺さった時に、痛みは全くないのか、といえば、それは患者さんの感受性によって、痛く感じやすい方もいれば、全く痛みは感じたことがない、という患者さんまで様々です。

痛みがでるとすれば、毛穴に鍼が入ったときに痛むという説もあります。他には、鍼灸師の技術としては、「切皮(せっぴ)」と呼ばれる鍼が皮膚を通過する動作がありますが、その時に特に、左手(右利きの場合)が甘いと切皮の時に痛みが出る場合があり、これを「切皮痛」と呼んだりします。この「切皮痛」がない鍼は心地良い鍼の条件の一つといえます。もちろん、この「切皮痛」がある時は、速やかに鍼を抜いて、打ち直します。

最後に鍼治療における「鍼の響き」について

鍼治療には、「鍼の響き」と呼ばれる鍼治療独特な感覚があります。鍼の響きについては、こちらのコラムをご覧下さい。

鍼の響き
https://harikanwo.com/column/index.php?e=2

このような鍼の響きを実際に患者さんに表現していただくと、「痛気持ち良い」「効いている感じ」「じんわりしている」「ビビビと走る」など様々です。感覚としては、「痛い」と「気持ち良い」の間のどこかの感覚といえるかもしれません。また、お体の状態が悪い方ほど「痛い」に近く、治療が進み、お体の状態が良くなるにつれて「気持ち良い」よりに近づいていく、といった傾向があります。

この鍼の響きは、注射針の痛みとは全く質が異なる別物の感覚である、ということは言わせていただきたいです。

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