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東洋医学と西洋医学のそれぞれの強み

日本では明治維新以降、西洋医学が医療の中心である、というより、西洋医学が医療として採用され、東洋医学が追いやられているのが現状ですが、そんな中、西洋医学を頼るものの、結果が出ない、良くならない、どころか、病状が低調のまま固定化されている方が多いように感じます。

私は、西洋医学を全否定するつもりはありませんが、東洋医学に携わる鍼師としても、東洋医学と西洋医学にはそれぞれの強みがあって、医療を求める患者さんはそれを理解した上で、どう自分の病と向き合って、克服するのかを考えていただきたいと切に願います。

そこで、私なりの東洋医学と西洋医学のそれぞれの強みをまとめてみたいと思います。

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西洋医学の特徴


西洋医学の基本的な考え方というのは、科学が土台になっています。科学的であることが条件となります。科学で証明できないことは除外するという傾向があると思います。

科学的であるということは、物事を分けていき、よりミクロな世界に踏み込んでいくことになります。従って、体の全体の状態を診るというよりも、行き着く先は細胞であったり、遺伝子といったことになります。

また、脳外科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、眼科、耳鼻科、歯科、心療内科といったように、体をパーツ、パーツに分けていって、それぞれの専門分野に分けていく特徴があります。その専門分野同士で連携があれば良いですが、あまりそのような連携はみられないと私は思います。

西洋医学の強み


西洋医学は、強い刺激(衝撃)が短時間に身体に生じたことが原因になっている疾患に対して強みを発揮する医学だと私は思います。例えば、交通事故で強い衝撃が一瞬、体に生じたことによって、外傷を負ったり、骨折したり、出血が多量であったり、といった場合のことです。

このような場合、救命医療ともいえ、時間との勝負になります。このまま放っておいたら命を落とす可能性が高い状況です。この場合、西洋医学の手法で一命を取り留める、ということが西洋医学の得意な分野であると思います。

これが役立つ状況というのは、戦争なのではないでしょうか。明治時代に、日本も西洋医学を採用し、東洋医学を弾圧し、追いやった歴史がありますが、これも国が戦争に役立つ医療として西洋医学を採用した面もあったと思います。

また、心筋梗塞や脳梗塞といった疾患の場合も危険な一刻を争う状況でも、西洋医学によって一命を取り止めるケースは多々あると思います。ただ、その心筋梗塞や脳梗塞を引き起こした原因を辿っていくと、血液の性状に問題があったり、体質の改善が必要な場合もあり、そのような場合は、「強い刺激が短期間に体に生じた」とは言えないのではないかと思います。そのような原因を薬剤のみで根本治癒できることはないのではないかと思います。

薬剤の投与に関しては、症状を軽減させる、消失させる、ということは可能である場合があるかと思います。しかし、私の考えでは、症状というのは、体の反応が表に現れている状態ともいえ、症状は「悪」だとは思っていません。症状をなくせばいい、ということではなく、もっと根本的な原因に対してアプローチして、その結果、症状が消えていくというのが理想だと思います。

例えば、腰痛で、腰の深部に硬さがあって、それによって腰に痛みや痺れが生じている場合、その腰の深部の硬さを緩めることができなければ、本当の意味での完治とはなりません。しかし、その腰痛に痛み止めの薬を服用したところで、痛み止めの薬は、脳につながる痛みの伝導路を伝わる電気信号を遮断することをしているだけなので、腰の深部の硬さが重症であればあるほど、硬さが緩まることはほぼなく、薬の効果が切れれば、再び痛みが現れることは多々あると思います。

また、風邪をひいて、発熱がある場合、発熱というのは、自己の免疫力を高めるために体温を上げている現象といえるので、解熱剤で体温を強制的に下げてしまうことは、免疫力が高まらず、長患いになってしまうことも考えられます。

このような意味でも、西洋医学は症状に対処する「対処療法」という面がかなりあると思います。今ある症状をなんとか抑えて、凌ぐという考えは必要なことも多くあると思いますが、それだけで完治することが困難であったり、逆にうまくいかず、長患いになったり、悪化することもあり得ることは認識しておいたほうがいいかと思います。

東洋医学の特徴


東洋医学の基本的な考え方は、身体は全体で一つであり、それぞれの内臓、器官、組織といったものが関係し合っていて、調和が保たれていることが健康であるとされます。

その調和が保たれれば、あとは自己のもつ自然治癒力が充分に働いて、病を完治してくれる、という考え方となります。

従って、治療は全体のバランスを整える、滞っている血液や気の流れを改善させることによって、自然治癒力がフルに働いてくれる体内環境の実現を目指すことになります。

東洋医学の強み


ここまで、西洋医学、東洋医学、それぞれの特徴をみていただいて、ご理解いただけるかと思うのですが、それぞれが相反する面が多いということになり、東洋医学の強みというのは、西洋医学の強みと相反するというか、逆とも言えるかもしれません。

従って、東洋医学の強みは、弱い刺激が長期間に渡って、体に影響したことが原因となっている疾患に対して、効果が発揮しやすいと言えると思います。

言い換えれば、慢性的な症状に対して効果的であるということです。慢性的な疾患は、病の原因が一瞬の衝撃を受けるようなことではなく、微量な刺激がじわじわと何年、何十年とかけて、形作られるものとなります。

治療としては、体質改善といったことが基本的に必要なことになります。これは、放っておいたら、直ぐに命に関わるといったことではありませんが、本人も気がつかず、気がついた時は重症であったりすることもあるわけです。

東洋医学にとって、お手上げな状況は、一刻を争う救命医療が必要な場面であり、早急に今、目の前にある症状を取り去らないと危険であるといった場合だと思います。戦争で、地雷を踏んで、足がもげてしまった、内臓が飛び出てしまった、といった場合にできることはないのではないか、ということです。

どう選択するか


患者さんの立場であれば、ご自身の抱える疾患や症状によって、どのような医療を選択するかは、最後は医師でもなく、私のような鍼師でもなく、ご家族でも親戚でもなく、友人でもなく、ご自身の決断となります。

その決断をするにあたり、上記のような西洋医学と東洋医学の違いや強みといったことを考えた上で、決断していただけたらと願います。

今回は東洋医学と西洋医学のそれぞれの強み、と題してきましたが、「強み」がつかめれば、「弱み」も見えてくるかと思います。

また、「強い刺激、弱い刺激」「短期間、長期間」といったことが基準となるということでしたが、疾患や症状によっては、どちらかはっきりしない、何とも言えない、といったこともあるかもしれません。それでも、大まかな基準として、参考にしていただけたら幸いです。


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カテゴリー: 鍼治療について

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