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鍼治療例

私が今まで診させていただいた患者さんの症例をご紹介させていただいております。

患者さんがどのような症状で来院され、私がどのように患者さんの状態を見極め、どのような鍼治療をどのぐらいの期間、頻度で鍼治療を行ったのか、その結果、患者さんの最初の症状などがどう変化したのかをご紹介させていただいております。

ご自身の症状などと比べて、参考にしていただけたらと思います。


ぎっくり腰
性別 女性
年齢 50歳代
最もお困りの症状 ぎっくり腰
その他の症状 膝から下に痛みがあり、むくみもある。特に右が痛む。
初診時の症状、体質
3週間前に起床時に腰がつらかったので、整骨院で強めのマッサージを受けたら悪化した。ギックリ腰の状態が今も続いている。朝は自力で起き上がることが困難。右腰部と左大腿の側面が特に痛み、しゃがむ動作ができない。

仕事にも支障がでていて、立ち仕事ができず、ご家族や周囲の方からも心配されている。

診察
お体の全体的なバランスとしては、特に右の第9胸椎第1腰椎付近の筋肉が硬く盛り上がっていることから、右腰背部を固めてバランスをとっている状態といえます。

また、腰椎と骨盤のつなぎ目付近は、表面上は力がないように感じますが、深い所の腰椎や骨盤を支えている筋肉や靭帯が硬く萎縮して体をなんとか支えている状態に思えます。

治療中に感じましたが、特に腰部の骨盤に近づけば近づくほど、深部が硬く、鍼が入ってから鍼が筋肉に締め付けられるような感触がありました。

治療内容
最も重視しなければならないのは、腰部と骨盤のつなぎ目の深部の硬さを緩めることです。ここは体の中心部であり、背骨を支える土台ですので、ここが緩んでくれば、体全体のバランスが整います。

第9胸椎第1腰椎付近の筋肉が硬く盛り上がっている個所も自然と緩みだし、左右差の少ない腰部と背部となることで、体に無理にかかっている負担が軽減され、ぎっくり腰の痛みから開放されると思います。

また、鍼治療の効果として、硬くなった腰部が緩むことで、つらい痛みが改善されるだけでなく、鍼治療は自律神経系にも作用することから、ホルモンの分泌を調節する力が高まります。そのような患者さんご自身が本来もつ体のバランスを保つ機能が高まることで、体調が良い方向に変化していくことも充分に期待できます。

ぎっくり腰の治療ポイント


経過
初診 5/17
肩部、第9胸椎、腰部に鍼をし、特に腰部の下部、骨盤の少し上を重視しました。特に、第5腰椎付近は深部が非常に硬く、緩むまで時間がかかりました。ご本人は、肩部は鍼が心地よく、腰部は多少、鍼がキツく感じたが寝てしまうほどリラックスして治療を受けれました。

2回目 5/23
初診の前は朝、起き上がる時に這っていたが、初診の直後にかなり体が楽になって、翌朝、這わずに自力で起き上がることができた。体が楽になったかどうかは朝の起床時が最もわかりやすい。
前回より、第9胸椎付近の萎縮、歪みが改善されています。腰部に鍼をするころにはご本人は呼吸が深くなり熟睡していたようでした。第5腰椎付近は特に右は鍼の感触が重く、時間をかけて緩めまるように鍼をしました。ご本人は前回よりも治療直後に体が楽に感じる。

3回目 5/31
ご本人は、腰は右が楽になってきた分、左が痛む。臀部から大腿側面にかけてもつらさがある。先週は歩ける感じがあったので、外出もしてみて、問題はなかった。
過去2回の印象としては、腰部の硬さは一枚岩のような硬さがありましたが、今日は硬さが残るものの一枚岩というよりは起伏がでてきているように思えました。硬さの芯の部分が浮き出てきているように感じました。

4回目 6/7
ご本人は、腰は左がかなり痛む。左の腰部、臀部、大腿外側にかけて痛む。椅子に座っている状態から動き出す時がつらい。
右の第9胸椎の硬さは僅かに残る程度。第2腰椎第5腰椎は左右とも、はっきりとした硬さがあります。ご本人は、鍼をされている時に、左の腰のほうがキツい感じがあり、右の腰は心地良さがあるようです。

5回目 6/21
ご本人、腰の調子が良い。前回までの左腰の痛みもない。今日は前回の治療から2週間空いたが、この2週間で痛みがでるようなことはなかった。
ご本人は調子が良いようで、確かに腰部は左はだいぶ硬さが取れてきています。しかし、右はまだ硬さはしっかりとあり、第2腰椎の硬さが最も目立ちます。

6回目 7/5
ご本人、腰が痛むことがたまにあるが、以前のように起き上がれないといったことはもうない。仕事も問題なくできている。
肩部の硬さがほとんど取れています。第9胸椎の左右差もほぼ感じません。腰部は前回とも異なり、歪んだ印象がなく、ほぼ左右対称で平らに感じます。第5腰椎付近の硬さもだいぶ取れていているが、残っている硬さに対して時間をかけて緩めるようしました。

7回目 7/26
ご本人、腰はこの2~3日は痛みがあり、特に右が痛む。
お体全体としては、以前のような左右差のある筋緊張はみられません。腰部もバランスが整ってきていますが、点状の硬さが第5腰椎付近に連なっています。

8回目 8/9
ご本人、腰の調子はだいぶ良い。今日は膝から下が特に右が痛み、むくみもあるので、膝から下を重視してほしい。
腰部は第5腰椎付近だけが気になる程度で、他は硬さが取れている。

治療期間: 3ヶ月間
治療間隔: 初診~4回目: 週1回、5~8回目: 隔週に1回


患者さんご自身が感じられた変化
初診後から腰が楽に感じられ、治療の回数を重ねるごとに腰の痛みから解放されるようになってきました。

それでも、治療の過程では、痛みは元々は右腰でしたが、それが左のほうが痛んだり、また右が痛み出したりということはありました。

それは、体が変化してきている証拠であると感じていましたし、初診時のような自力で起き上がれないような激しい痛みは治療の早い段階からなくなっていたので、不安はありませんでした。

その後も再発することは今のところないので、本当の意味で体のバランスが整ったことで腰の調子も良いのだと思います。

考察
初診時に初めてお会いしたときは、苦痛で顔が歪むほどつらそうでした。お体としては、長年の積もり積もった負担が腰の深部に溜まっていて、それでも負担をかばうように腰や背中を酷使してきたことで、第9胸椎付近と第5腰椎付近は硬さに左右差が明らかにあり、体全体が大きく歪んだ状態でした。

ぎっくり腰は上記のようなバランスを失った状態が下地としてあり、その上で、何らかのきっかけによって激痛に襲われ動けなくなってしまうというのがほとんどに思えます。

きっかけは様々ですが、重いものを持ち上げた時といったいかにも腰に負担をかける動作ばかりでなく、くしゃみをした瞬間や洗面所で顔を上げた瞬間など、ちょっとした動作でギックリ腰が引き起こされる場合もあります。

この患者さんの場合は、マッサージを受けた後に痛みに襲われたということで、バランスを既に失っていた状態から力任せのマッサージを受けて体が緊張したことで、ぎっくり腰の状態になってしまったと考えられます。

治療としましては、負担のかかっている第9胸椎付近と第5腰椎付近を鍼で緩めながら、腰椎と骨盤の境目や骨盤中央の仙骨上や骨盤外側の腸骨の硬さをとっていくことで、腰部のバランスが徐々に整い始め、3ヶ月後には、初診時の体の歪みはなくなり、それに伴い、腰の痛みも消失していきました。

ぎっくり腰は何か力んだりした瞬間に体が硬直したり、動くと激痛が走ることから、体を動かせないような状態になり、体全体がつったような状態になります。

腰部と骨盤との境目を中心に適切な鍼ができると、腰部が緩み、それに従って緩んだ状態が体全体に波及していくように回復します。痛める瞬間は一瞬であることが多いため、その痛めた動作が悪かった、と考える患者さんがいますが、その激痛が現れるまでの下地というものは以前から作られていて、きっかけがあれば激痛に襲われるということが起きているのだと思います。

つまり、日頃からの体への無理な負担が積もり積もって限界に達した状態の時に、何かきっかけとなる動作があると、ぎっくり腰として激痛や動けなくなるといった激しい症状に襲われる、というのがぎっくり腰の正体なのではないでしょうか。

カテゴリー:ぎっくり腰

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