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虎の尾

虎の尾石坂流鍼術の創始者である石坂宗哲が残した文献である「鍼灸知要一言」に、鍼治療を行う者の姿勢はこうあるべきだ、ということの一つが以下のように書かれています。

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「鍼ヲ行フ者ノ心得ヲイマシメテ、深キ淵ニ臨ミ薄キ氷ヲ踏ミ、貴人ノ前ニ待坐シ、或ハ手ニ虎ノ尾ヲ握ルガ如シナド油断ナキ様ニイヘルナリ。万ノアヤマチハ皆油断ヨリ生ズト言フベシ。」

要約すると、

「鍼を行う者の心得として、深い淵の薄い氷を踏むように、貴人の前に座るように、あるいは、虎の尾を握るように、油断のない姿勢で挑みなさい。多くの過ちは、油断から生ずると心得るべき。」

ということになるかと思います。

これは、鍼灸師として治療に挑む姿勢のことでもあり、実際に患者さんに鍼をしている最中の心得のようです。

特に、「虎の尾を握るように」という表現は、鍼治療中の私の心境としても、凄く上手い表現だと思うのです。緊張感があり、集中力を高め、隙をつくらず、油断せず、次の瞬間に何が起きても反応できるような姿勢が治療中には必要に思えます。

先人の言葉を心に刻んで、上を目指して鍼治療に取り組んでいきたいです。

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カテゴリー: 鍼治療について

体重増加と鍼

特に身体の状態の良くなった患者さんに言われることなのですが、最近、体重増加気味なので、鍼でなんとかならないか、と聞かれます。

また、そう言われる患者さんのほとんどは女性です。

大雑把ではありますが、健康的な状態とは、快眠、快食、快便できる状態に思えます。逆に言えば、どこか身体や精神に不調があると、快眠、快食、快便のいずれか、または複合的に変調が現われると言えます。

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つまり、鍼灸の治療が必要な方というのは、この快眠、快食、快便がうまくいかない方であり、裏をかえせば、快眠、快食、快便ができる身体になることが治療の一つの目標とも言えます。

そのような身体作りができれば、多少の不調はご自分のチカラで、回復できると思えます。

体調の不調があって、鍼灸治療を始められた方が、最近、体重増加で…、ということは、以前より消化器系にチカラがついてきて食欲がでてきた、または以前は身体のバランスを欠いているために、栄養の吸収が充分できるチカラが不足していたのが、栄養をより吸収できる身体に変化してきたということが考えられ、喜ばしいことに思えます。

確かに、体重増加を異常ととらえるならば、ホルモン分泌異常、代謝異常、糖尿病、などが考えられ、私達治療者は注意深く、その患者さん個人個人の状態を診る必要はありますが、鍼灸治療を通して、身体の状態が上向きの方の場合、体重増加は良いサインに思えます。

特に女性の患者さんで、最近、体重増加で…、と仰る方のほとんどは、私からみれば、今までが痩せ過ぎであり、適正に近づきつつある、という印象です。なかなか女性にはご理解いただけないですが(笑)

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はりは、金と咸

「はり治療」の「はり」は「鍼」という漢字を使います。「針」のほうは裁縫に使われる「はり」となります。

先日、ある患者さんが、

「「鍼」という漢字は、「かねへん」に「咸」と書きますが、「咸」って感じるの「感」の上の部分ですよね!」

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「鍼治療って、金属である鍼を感じるってことなんですかね!」

と、仰っていました。

私はこの患者さんは鋭い感性の持ち主だと思うばかりでなく、患者さんから気づかされることが多いとつくづく思うのです。

この患者さんは、毎回の治療の際に鍼を受ける感覚が、体の状態が悪かった治療を始めた頃は「響き」(響きに関してはこちら)が強烈に感じていたのが、治療が進み体が変化し、体の中の滞りが解消され循環が良くなるにつれて、鍼の響きの強烈さが薄れ、よりマイルドで心地良いものに変化してきたと仰います。

響きが心地良いものに感じられるようになるにつれ、抱えていた症状が改善・解消され、体全体の体調が良くなることがよくあります。これは多くの患者さんに起きていることであり、私自身も私の師匠の鍼を受けてきて、全く同感できます。

また、患者さんが感じる変化だけではなく、鍼師が鍼を介して、また手から伝わってくる感覚というものがあり、それも治療を進めていくにしたがって、常に変化します。

「咸」という漢字を調べると、

「咸は感ずることである。感情が心の中に動くこと。自分の心がけが正しく、それが相手に伝わり、喜んでこれに応じるときはその人と親しく交われる。」

とあります。

金属である鍼を通して、鍼師と患者さんの間で、相互に様々な変化を感じながら、患者さんの本来持つ治癒力を引き出すことが鍼治療の特徴であると思います。

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ミケランジェロ…

10年ほど前にバチカンを訪ね、サン・ピエトロ大聖堂の凛とした空間の中で、ミケランジェロ作「ピエタ」を見たときにその神々しさをただただ感じました。そんなこともあり、この逸話が心に響きました。



ある人がミケランジェロに尋ねた

彼はイエスの像をつくっていた

「あなたの創作は偉大ですね」

彼が言うには、

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「私は何もしてやしません

イエスがこの大理石の塊に隠れていたのです

私はただ彼が解放されるのに手を貸したにすぎません

彼はすでにそこにいました

ただ少し余計な大理石が、必要以上のものがくっついていただけです

不必要なものがそこにありました

私はその不必要なものを切り落としました

私はただ彼を発見したにすぎません

創作したのではないのです」

この大理石の塊は捨てられていた

そこで彼はそれをもらっていった

そして、イエスの像の中でも最もすばらしいもののひとつがその塊からできたのだ

ミケランジェロは言った

「私がこの塊のそばを歩いていると、イエスが私を呼んだ

その塊の中に隠されて、彼は、

"ミケランジェロ、ここへ来て私を救い出しておくれ!"

と言ったのだ

そこで私はただ仕事をしたにすぎない」



私にはこの逸話が鍼灸治療にも通じるものがあるような気がしてなりません。

何か異物を外部から足したり、内部から取り出したり、治療者側が「治す」ということではなく、患者さんの中に秘められた治癒力、余計なものを省いた生命力、そういったものを引き出すことが鍼灸師の目指すことに感じています。

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鍼の響き

鍼が的確に「ツボ」をとらえると、「響き」と呼ばれる、じんわりとした感覚が走ることがあります。その響きは、その鍼の刺さっている個所の深部に起きる場合もあれば、腹部や手足に走る場合と様々です。

響いている個所がその患者さんの悪い所だとも言われています。また、響きがなければ、効いている鍼ではない、とも言われています。

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その響きの感触は患者さんによっても異なり、もの凄く心地良くて何時間でも鍼をしていてほしいという方もいれば、痛く感じる、キツいという方もいらっしゃいます。

痛く感じる場合やキツく感じる場合は、鍼の太さをより細いものにしたり、鍼の操作をより慎重にし、繊細な手技が必要とされます。

私の経験からいえば、響きが痛く、キツく感じる患者さんほど、身体の状態は悪く、治療にも時間がかかるように思えます。それでも、時間をかけて治療していく内に、少し痛かったり、キツく感じていた響きが「痛きもち良い」といったものに変化してきたり、少しキツいぐらいでないと物足らない、といった患者さんもいらっしゃいます。

術者としては、患者さんの反応を見極めながら、その患者さんに適した響きをだしていくことが大切に思えます。

私の鍼の先生は、響きは上品でマイルドで味わい深いものでなければならない、と仰いながら、食器棚から陶器製の杯を取り出し、私に手渡すと、この杯のように、色合いや模様に品があって、重さや質感が絶妙でよく手になじむものが品があるということであって、こういった味わい深いものが鍼の響きに備わっていなければならない、と仰っていました。

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東洋医学の1ページ目

私が鍼灸学校に入学して最初に開いた東洋医学の入門書の1ページ目にこう書かれていたことを覚えています。

「人体は小宇宙である。」

これには幾つもの深い意味が含まれているのだと思いますが、私なりに以下のように感じるものがありました。

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人間には宇宙の全てを理解することができないように、人体も全てを理解できるものではない。従って、人体を理解しようと試みる者は、その全てを理解できないことを心に刻んで、謙虚な心で探求しなさい、と私は感じました。

その後、私は鍼治療の道を歩んできて治療の経験を積めば積むほど、この謙虚さは最も大切なことの一つに思えてなりません。なぜなら、謙虚さがなければ、鍼灸師の一人よがりな治療になり、患者さんのための治療ではなくなるからです。

鍼治療とは「対話」である、といわれます。患者さんが感じる鍼の感触、私が感じる私の手や鍼から伝わってくる感触、また、患者さんの訴え、ご希望や、それに応えたいと思う私の気持ち、そういった患者さんと私との間で繰り返される様々な「対話」があります。

この「対話」は鍼灸師の一人よがりな自己満足では実現できません。鍼治療に対して、私はいつでも謙虚に、真摯に取り組むように努めています。

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