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鍼治療例

私が今まで診させていただいた患者さんの症例をご紹介させていただいております。

患者さんがどのような症状で来院され、私がどのように患者さんの状態を見極め、どのような鍼治療をどのぐらいの期間、頻度で鍼治療を行ったのか、その結果、患者さんの最初の症状などがどう変化したのかをご紹介させていただいております。

ご自身の症状などと比べて、参考にしていただけたらと思います。


不妊症
性別 女性
年齢 40歳代
最も強い症状 不妊症
その他の症状 疲れやすい、立ちくらみがある、冷え性、低血圧症、胃がもたれる

初診時の症状、体質
2年前に第一子出産。出産時に過呼吸になり、意識不明となりました。その時に、病院で脳の検査を受け、異常はありませんでした。

今年3月に流産し、流産による手術を受けました。第二子の妊娠、出産を希望しています。

体質的には、冷え性、疲れやすさがあります。それに伴い、立ちくらみ、肩こり、眼精疲労あります。仕事のストレスで、腹痛がたまに起きます。

長男を抱えた時などに腰背痛があります。

血圧は、90/50mmHgです。

生理前に感情が不安定になり、鬱状態になることがあります。

診察
問診からは、体の冷えが強く、気虚血虚(気と血液が共に充分でない状態)で、虚証(虚弱なタイプ)に思えましたが、治療をしてみて、それほどの虚証ではないように思えました。

施術中や施術後は、身体が温まるようで、眠気もあり、リラックスしているようにみうけられました。リラックスできる状態とは、副交感神経優位の状態であり、鍼灸治療の効果の代表的な現われであり、効果が出やすいタイプに思えます。

治療内容
不妊症を解消して妊娠したいというご本人の意向は強いものがありますが、まずは身体全体の状態を高め、冷え性、疲れやすさ、胃腸の不調、立ちくらみ、低血圧ぎみ、といった症状を改善させ、特に胃腸の状態を改善し、栄養がしっかりと吸収できるようになれることを第一の目標とします。

また、腰部、仙骨部(骨盤)の治療を積極的に行うことで、生殖器を支配する神経の停滞を改善させ、組織が活性化することによって、妊娠しやすい身体を作ることを目指します。

栄養の吸収を高めることと生殖機能を活性化することは別々のことではなく、身体全体の状態を上げることであり、治療は全体をとらえながらの治療となります。

鍼は、頸部肩部、腰背部、仙骨部の張りや硬さがとれるように行ない、特に右仙骨部の経穴名(ツボ名)でいう「次髎(じりょう)」の硬さを解消することが最重要に思えます。

不妊症の治療ポイント

経過
初診 10月16日
治療中は、ご本人は鍼の感触が心地良く、眠くなる。治療後は、顔色も良くなり、血液循環が良くなったようにみえました。

第2回目 10月24日
前回の治療後、ご本人は背中が楽になるが、3日後には以前と変わらないようになりました。ご本人は体温が以前より高く感じるとのことです。ストレスが溜まると胃の辺りがチリチリと痛む。治療後、ご本人は身体がスッキリした感じがある。今日は、前回よりも消化器系に関連するツボと仙骨上の治療に重点を置きました。

第3回目 10月30日
ご本人、背部の張りがとれてきました。今週から生理が始まり、風邪も引き始めた。

生理中のせいもあってか、ご本人は鍼に対してやや敏感な感じがあります。今回も仙骨上の治療に重点を置きました。治療後はご本人はスッキリして元気が出る感じがあるとのこと。治療中は眠気は強いようです。

第4回目 11月6日
先週の風邪はつらかったが、今日はほとんど全快したとのこと。食欲はあり、胃痛もない。

今日も仙骨上を重視しましたが、腰部の鍼の感触はあまりはっきりとしませんでした。

第5回目 11月16日
先月、人工授精を受けたが今回は成功しなかったよう。咳が少し残るが胸痛がするほどではない。胃痛は最近はないとのことです。

今日は首にも硬さがありました。引き続き、仙骨上の治療を重視し、第2、第3腰椎の間のツボである「命門」にも時間をかけました。

第6回目 11月20日
咳はなくなり、胃痛もないとのこと。週の後半でも疲れを感じずに過ごせたようでした。このような変化は体全体の状態が上がってきているように思えます。

治療中に、背部の硬さに緩みが現われてきていて全体的にも体が緩んできているように感じます。

第7回目 11月23日
あまり疲労感はないが、生理前で眠気が強く、集中力がない感じがするとのことです。

今日は、やや腰背部が前回よりも硬く、仙骨上も今までの右よりも左が硬いです。体が変化してきているように思えます。

第8回目 12月4日
ご本人で妊娠検査薬で妊娠の反応がありました。明日、産婦人科で検査予定。眠気が強く、少しめまいがすることがあるとのこと。食欲がある時とない時の差が激しい。胃痛もある。背中の張り、痛みも少しある。

首の硬さがとれています。背部の硬さも鍼をすると容易に緩みます。第4腰椎付近の鍼に時間をかけました。仙骨部は良い状態で、鍼をする必要はありませんでした。

第9回目 12月12日
産婦人科でも妊娠が確定しました。悪阻が始まっているとのこと。第一子の時ほどではないが、空腹時に悪心があり、食べると口が苦い。脂っぽいものと甘いものは食べれない。ごはん類は食べられる。

今日は、消化器系のツボに重点を置きました。右胃兪の鍼の感触はしっかりとしたものがありました。懐妊を機に、仙骨部の硬さが気にならなくなっています。

第10回目 12月19日
先週よりも悪阻がつらいとのこと。空腹時と食後は悪心が強い。第一子の妊娠3~4ヶ月の時も悪阻は強かったとのことでした。

背部の張りはだいぶとれているように思えます。腰部の鍼の当たりはあまりはっきりとしませんでした。命門を重視しました。

第11回目 12月28日
食欲が出てきたとのこと。空腹時、食後に口が苦くなり悪心がある。悪阻は軽度のものになってきているとのことです。

脈が前回よりも落ち着いていました。首は右、背部は左、腰部は右に硬さがあります。命門腎兪に時間をかけました。

第12回目 1月15日
食欲旺盛で食べ過ぎてしまうことがあるとのこと。

左右の肩甲骨の内縁にあった張りはだいぶとれてきています。

第13回目 2月6日
悪阻はほとんどなく落ち着いてきたとのことです。眠気が強い。今週は肩こりが強く、腰痛も少しある。便秘ぎみ。

全体的に鍼に対して体が素直に反応しているように思えます。

第14回目 2月19日
腹部が出てきていて、腰痛があるとのこと。

左右の第4~5腰椎に硬さがあり、鍼はしっかりと当たり、よく緩んみました。腹部の重さで腰と背中に負担が今までよりもかかっているように思えます。

第15回目 2月26日
週の後半に腰痛が強まったとのことでした。眠気が強い。便秘は改善されてきた。

腰部は右のほうが硬く、負担がかかっています。

第16回目 3月5日
胃痛がある。よく寝れない日があり、その翌日に胃痛がある。腰痛もある。

胃のツボに反応あります。仙骨上に硬さが目立ちます。

第17回目 3月18日
胃痛は気にならなかったとのことです。腰背痛がある。

腰背が緩むように治療しました。

第18回目 3月22日
立ちっぱなしの時に腰痛があるとのことです。肩・背部の張りも強く、目の疲れもある。胃痛はなくなってきたが、食後に悪心が少しある。

腹部が大きくなってきたことに伴い、うつ伏せで鍼を受けるのが難しくなり、横向きで治療しました。腰部を中心に治療を行い、ご本人は治療後、腰がかなり楽になったと仰っていました。

第19回目 4月8日
腰痛がある。肩こりは少し気になる程度。胃痛なし。

腰部はしっかりと鍼が当たり、手応えがありました。

第20回目 4月15日
何か重いものを持ったりしなければ腰痛はないとのことです。便秘ぎみ。肩・首は午後になってくるとつらくなってくる。

肩甲骨の高さと腰部を中心とした治療を行いました。

治療期間
6ヶ月 計20回
(初診~ご懐妊 2ヶ月)

治療間隔: ほぼ週1回

患者さんご自身が感じられた変化
妊娠するまでの2ヶ月間と妊娠中の4ヶ月間、お世話になりました。

今回は第二子目の出産となりましたが、私の場合、自然な形では妊娠できないことは第一子の時も同様でした。第一子の時は鍼治療は受けたことがありませんでした。

今回も体内受精で妊娠できましたが、この治療院を訪ねたのは、体内受精をあきらめて、体外受精にするかどうするか、といったタイミングでした。

鍼治療は体に無理のない、自然な治療法だと聞いていたので、不安というよりは期待感のほうが大きかったです。

実際に治療を始めると、鍼は想像していた以上に心地よさがあり、治療中は眠くて、半分寝ているような感じでした。妊娠するまでは、胃痛がよくあったのですが、鍼治療を始めてからは胃痛が気にならなくなりました。

妊娠中は悪阻があって、食欲に波があったり、胃もたれもあったりしましたが、第1子の時の妊娠中よりも悪阻をはじめとするつらさは早い時期に治まったと思います。

お腹が大きくなるにつれ、腰や背中がつらくなってきました。鍼治療を受けると腰や背中が軽くなり、よく眠れるようになります。お腹が大きくなってくる前は、鍼治療はうつ伏せで受けていましたが、お腹が大きくなるにつれ、うつ伏せだとお腹が苦しいので、横向きで鍼治療を受けました。

この治療院に通院するまでは、不妊治療としていろいろなことに取り組んできましたが、思うように結果は出ず、第2子はあきらめかけていました。それでも、通院するようになってから2ヶ月間で、妊娠できたことは夢のようでした。

考察
初診から約2ヶ月で妊娠され、その後の妊娠初期時から安定期に入られる時期に鍼治療に取り組んでいただきました。

この患者さんの場合、人工授精での妊娠を希望されていたということで、今までも様々なことを試してこられたようでしたが、鍼治療に行き着き、良い結果に結びついたケースだったと思います。

治療開始当初は、消化器系の症状が目立ったこともあり、まずは消化器系を強化し、栄養がしっかりと吸収できる身体を目指すことから治療を開始しました。徐々に胃痛などの症状が軽度のものに変化しました。また、それと同時に、生殖器を司る腰部や仙骨部の滞りを解消するための治療も積極的に行ないました。こうした治療を続けていき、約2ヶ月後に妊娠されました。

妊娠が確定後も治療を継続し、身体のバランスを整えることを意識しながらの治療となりました。腹部が大きくなるにつれ、下腹部が下方に引っ張られることもあり、また妊娠前よりも同じ日常動作においても、腰部の負担が増すこともあり、腰部や背部の張りが強くなることがよくありました。そうした腰背部の張りをとることも意識しました。

妊娠4ヶ月の時点で、患者さんご自身が他県に引っ越されたこともあり、その後の治療、ケアを行なうことができませんでした。本来ならば、妊娠前から、妊娠初期、安定期を経て、出産前まで鍼を受けられるほうが、出産時や出産後がよりスムーズであると思われます。

また、出産時には骨盤が開いたり閉じたりすることで、骨盤のズレが生じやすく、出産時の骨盤や仙腸関節のズレがその後の腰痛の原因となる場合や、出産時に本来静脈血として回収されるべき血液が体の組織に留まり冷えや循環不全の原因となる瘀血(おけつ)が起こりやすいこともあり、産後のケアに鍼治療は大変有効に思えます。この患者さんも出産直前までや出産後にも鍼治療に取り組んでいただけたらよかったのですが、その点が残念でした。

不妊治療という点では、必ずしも鍼治療が効果があったとは断言できません。妊娠、出産といったことは、その患者さんの体の状態ばかりでなく、環境面や、特にメンタル的な要素、また目には見えない力に大きく影響されることがあると思うからです。それでも、鍼治療によって、体の滞りを解消し、消化器系症状が改善し、よく眠れるようになれたことなどは、妊娠・出産を実現するにあたっての基本的な下地となったといえるのではないでしょうか。

カテゴリー:不妊症

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