鍼治療例
私が今まで診させていただいた患者さんの症例をご紹介させていただいております。
患者さんがどのような症状で来院され、私がどのように患者さんの状態を見極め、どのような鍼治療をどのぐらいの期間、頻度で鍼治療を行ったのか、その結果、患者さんの最初の症状などがどう変化したのかをご紹介させていただいております。
ご自身の症状などと比べて、参考にしていただけたらと思います。
2013-05-12 Sun
性別 女性
年齢 70歳代
最もお困りの症状 腰痛
その他の症状 右肩周辺の痛み、中性脂肪と肝機能の数値が悪い、下痢
1ヵ月後に海外旅行の予定があり、トレッキングなどを含むツアーなので、それまでに無理なく参加できるようになることが目標。
右肩周辺の痛みあり。中性脂肪と肝機能の数値が悪い。下痢することが多い。
腰部は、左右の第12胸椎~第5腰椎まで硬さが板状にあります。仙骨部よりも腰部で体の負担を受けているような印象です。
腰部を中心に長年かけて悪化させてきているような印象です。なかなか短時間で完全に腰痛を消失させるという結果は難しいですが、ご本人の希望である1ヵ月後の海外旅行が無理なく楽しめるよう、週1回の治療で結果を出せるよう努めます。
坐骨神経痛があるようであれば、腸骨上(臀部)の深部への鍼で骨盤周りを緩めたいです。
旅行出発日直前まで週1回、通院していただき、腰痛の緩和、消失、体の動きに変化が出てくるかなど、様子をみながらの治療となります。
腰部は左右とも板状の硬さで、鍼も入りづらく、当たりも重い。左の第2腰椎付近は、ご本人、響きが強く、しっかりとした手応えは鍼から伝わってくるものの、緩みきるところまではいかない。鍼を抜く時も、体が鍼を離してくれないほど緩みきらないとも言えるし、体が鍼を要求しているようにも思えた。
第2回目 5月19日
ご本人、腰の痛みがこの数日間はあるが、前回の治療後は体をかがめたり、足を組んだりしても以前よりも痛みは出ない。左右とも臀部の痛みが気になる。
第12胸椎~第5腰椎までの硬さはかなり強い。前回よりも臀部の治療を積極的に行なった。
第3回目 5月25日
前回の治療後、腰痛が緩和されてきたが、うつ伏せになると、第5腰椎付近がつらい。
腰部は右が少し緩んできたように感じる。左は依然として硬さが根深い。背部は少し右の腰部が緩んできたせいか、左肩甲骨内側に張りが浮かんできたように数箇所、硬さが連なる。治療は、肩部、肩甲骨内側、腰部、臀部を中心とした。
第4回目 6月1日
1日に一度ぐらい腰痛を感じる。歩行時によくあり、止まって休むよう。第5腰椎付近と臀部のやや下方がつらい。でも、以前の腰の痛みとは異なり、日常的につらいということはなくなってきた。
前回同様、左肩甲骨内側に張りが目立つ。腰部は鍼の本数が減って、打つべきツボに集中できてきている。鍼の感触としては、腰部の硬さは非常に強いままだが、鍼をすると緩む感じははっきりとある。
第5回目 6月8日
今日は、腰痛がはっきりとあり、右臀部が特につらく、重く感じる。歩行時には左足の前面に痛みがでる。
左の肩甲骨内側の張りが取れてきている。腰部は鍼の入りやすさが少しでてきているが、深部の硬さは依然として強い。
第6回目 6月15日
今日は左臀部、昨日は左右臀部に少し痛みがあったが、歩行が困難だったりすることはない。
背部の張りは緩んできており、腰部の治療に集中する。腰部は鍼が少し入りやすくなってきている。
今回が海外旅行前の最後の治療となり、ご本人としても腰の症状としても自信を持って出発できそうとのこと。
第7回目 9月29日
治療は3ヶ月半中断。前回のトレッキングツアーは無事に楽しむことができた。
今後はご本人としては、来年2月のパタゴニアツアーに参加できるよう準備していきたいとのこと。
日常的に腰が痛むことはないが、先日お墓参りで掃除をかなりやってから、翌日から腰が痛み、左足の裏の筋肉が硬直している。
治療は3ヶ月半ぶり。肩部~肩甲骨内側にかけて特に左側に硬さが連なる。腰部は第2~第5腰椎、臀部にかけて硬さが板状につながっている。特に第5腰椎は脊柱に近いところから外側に向かって硬さが伸びている。
第8回目 10月4日
腰は楽になってきている。歩行時に左足の小指に痛みを感じた。
頸部、肩部の硬さが気になったが、腰部に重点を置く。腰部は鍼の入りずらさがあったが、はっきりとした当たりが多い。第5腰椎の左は硬さが外側に伸びる。
第9回目 10月12日
ご本人、腰痛が良くなってきている実感がある。病院で検査を受けたら、肝機能と中性脂肪の数値が悪いと言われた。
第5腰椎は数週間前に比べ緩んできているが、第1~第3腰椎の特に左は硬さが連なり、鉄板が入っているような感触。この付近は腎臓と関連がある。
第10回目 10月18日
腰にうずくような感覚があって以前とは違うように本人は思える。左大腿の裏に坐骨神経痛があった。
腰部は第2腰椎の左側を中心に治療をする。腰部の鍼は全体的に深く、当たって硬く、その後、ネバリがでてきて重い感触。仙骨部は鍼が負けているぐらい硬かった。
第11回目 11月2日
昨日は腰がうずいたが、続かず直ぐに治まった。腰は左のほうがうずく感じは強い。
腰部は第1~第2腰椎にかけて板状の硬さがある。第5腰椎の左は外側に向って硬さが伸びる。左腰部が緩んでくるまで時間をかけた。
第12回目 11月16日
腰は朝、起床時に少し痛むが直ぐに痛みは治まる。坐骨神経痛は左の臀部~大腿の裏にかけて、週に1回ぐらいある。
腰部に治療時間の7割をあて、徹底的に左腰部を緩めることに努めた。
第13回目 11月30日
今週、高尾山に2回、登った。登山後に体がつったが翌日は楽になる。腰痛はなかった。
今日も腰部に時間をかけたが、前回までよりも右腰のほうが硬さがある印象。鍼が浅い所でつまり、突破して一気に深く入っていくことが多かった。
第14回目 12月14日
2月のパタゴニア旅行に向けてウォーキングを続けている。特に腰が痛むことはない。骨密度の検査を受けて30代の数値だった。
以前のような左腰部の硬さがだいぶ和らぎ、その分、右腰の硬さが気になるとのこともあり、右腰に重点を置いた。
第15回目 12月28日
町内会の手伝いで8時間、立ちっぱなしで、左右の臀部が重だるくつらかった。坐骨神経痛も左臀部にあったが、今日はあまり感じない。
肩部がはっきりとした鍼の当たりで最近としては肩部、肩甲骨内側に張りと硬さがあった。腰部は、深いところで、しっかりとした鍼の感触を得る。先週より左腰が硬く、なにか無理をすると左腰に負担がかかる体の使い方をしているように思える。
鍼治療を受ける度に、腰は楽になり、ツアー出発日までに、日常生活では腰痛で不安になるようなことはなくなっていました。それでも、無理をすれば腰は痛くなる状態でしたので、用心しながらでしたが、ツアーにも無事に参加することができました。ツアーの1ヶ月前は、ツアーはキャンセルするかどうか迷うほどでしたので、無事に参加できて本当に助かりました。
帰国後はまた別のトレッキングツアーの計画に向けて腰を治して良い準備ができたらという想いで、鍼治療を続けています。
海外旅行に行きたいというご本人の強い希望が体を治そうという良い動機付けになっていると思います。こういった体を治して自分は何をしたいのか、という目標が明確な方ほど快方に向える気がします。
この患者さんは、初診時の目標であった南米のトレッキングツアーに無事に参加されました。帰国後も治療を続けられていて、半年後の別の海外ツアーに参加される予定で、益々治療に積極的に取り組まれ、普段の生活でもご自分で気をつけるべきことを考えながら次の目標に向っておられます。
今後の治療は腰部の硬さをとることが最優先ですが、それに伴って、肝機能や消化器系の症状にも効果があるよう、治療を継続しています。
元々、活動的な方なので、腰痛などがなくなると、直ぐにかなり腰に負担になるようなことをしてしまう傾向があります。もう少し目標に向って徐々に負荷を上げていくような気持ちで取り組んでいただけるとさらに良いと思います。
年齢 70歳代
最もお困りの症状 腰痛
その他の症状 右肩周辺の痛み、中性脂肪と肝機能の数値が悪い、下痢
初診時の症状、体質
1ヶ月前に腰が痛み始めた。歩行中に腰の筋肉が硬直するような感覚があった。3年前にも腰痛があったが、その時は左腰のみで、今回は左右ともにある。初診時は特に左臀部に痛みがある。1ヵ月後に海外旅行の予定があり、トレッキングなどを含むツアーなので、それまでに無理なく参加できるようになることが目標。
右肩周辺の痛みあり。中性脂肪と肝機能の数値が悪い。下痢することが多い。
診察
肩部は右鎖骨外側下端と右鎖骨下際に硬さがはっきりとあります。腰部は、左右の第12胸椎~第5腰椎まで硬さが板状にあります。仙骨部よりも腰部で体の負担を受けているような印象です。
腰部を中心に長年かけて悪化させてきているような印象です。なかなか短時間で完全に腰痛を消失させるという結果は難しいですが、ご本人の希望である1ヵ月後の海外旅行が無理なく楽しめるよう、週1回の治療で結果を出せるよう努めます。
治療内容
頸部、肩部を緩ませつつ、とにかく、板状に凝り固まった腰部、特に第12胸椎~第5腰椎までを徹底的に緩められるよう腰部に時間をかけたいです。坐骨神経痛があるようであれば、腸骨上(臀部)の深部への鍼で骨盤周りを緩めたいです。
旅行出発日直前まで週1回、通院していただき、腰痛の緩和、消失、体の動きに変化が出てくるかなど、様子をみながらの治療となります。
経過
初診 5月12日腰部は左右とも板状の硬さで、鍼も入りづらく、当たりも重い。左の第2腰椎付近は、ご本人、響きが強く、しっかりとした手応えは鍼から伝わってくるものの、緩みきるところまではいかない。鍼を抜く時も、体が鍼を離してくれないほど緩みきらないとも言えるし、体が鍼を要求しているようにも思えた。
第2回目 5月19日
ご本人、腰の痛みがこの数日間はあるが、前回の治療後は体をかがめたり、足を組んだりしても以前よりも痛みは出ない。左右とも臀部の痛みが気になる。
第12胸椎~第5腰椎までの硬さはかなり強い。前回よりも臀部の治療を積極的に行なった。
第3回目 5月25日
前回の治療後、腰痛が緩和されてきたが、うつ伏せになると、第5腰椎付近がつらい。
腰部は右が少し緩んできたように感じる。左は依然として硬さが根深い。背部は少し右の腰部が緩んできたせいか、左肩甲骨内側に張りが浮かんできたように数箇所、硬さが連なる。治療は、肩部、肩甲骨内側、腰部、臀部を中心とした。
第4回目 6月1日
1日に一度ぐらい腰痛を感じる。歩行時によくあり、止まって休むよう。第5腰椎付近と臀部のやや下方がつらい。でも、以前の腰の痛みとは異なり、日常的につらいということはなくなってきた。
前回同様、左肩甲骨内側に張りが目立つ。腰部は鍼の本数が減って、打つべきツボに集中できてきている。鍼の感触としては、腰部の硬さは非常に強いままだが、鍼をすると緩む感じははっきりとある。
第5回目 6月8日
今日は、腰痛がはっきりとあり、右臀部が特につらく、重く感じる。歩行時には左足の前面に痛みがでる。
左の肩甲骨内側の張りが取れてきている。腰部は鍼の入りやすさが少しでてきているが、深部の硬さは依然として強い。
第6回目 6月15日
今日は左臀部、昨日は左右臀部に少し痛みがあったが、歩行が困難だったりすることはない。
背部の張りは緩んできており、腰部の治療に集中する。腰部は鍼が少し入りやすくなってきている。
今回が海外旅行前の最後の治療となり、ご本人としても腰の症状としても自信を持って出発できそうとのこと。
第7回目 9月29日
治療は3ヶ月半中断。前回のトレッキングツアーは無事に楽しむことができた。
今後はご本人としては、来年2月のパタゴニアツアーに参加できるよう準備していきたいとのこと。
日常的に腰が痛むことはないが、先日お墓参りで掃除をかなりやってから、翌日から腰が痛み、左足の裏の筋肉が硬直している。
治療は3ヶ月半ぶり。肩部~肩甲骨内側にかけて特に左側に硬さが連なる。腰部は第2~第5腰椎、臀部にかけて硬さが板状につながっている。特に第5腰椎は脊柱に近いところから外側に向かって硬さが伸びている。
第8回目 10月4日
腰は楽になってきている。歩行時に左足の小指に痛みを感じた。
頸部、肩部の硬さが気になったが、腰部に重点を置く。腰部は鍼の入りずらさがあったが、はっきりとした当たりが多い。第5腰椎の左は硬さが外側に伸びる。
第9回目 10月12日
ご本人、腰痛が良くなってきている実感がある。病院で検査を受けたら、肝機能と中性脂肪の数値が悪いと言われた。
第5腰椎は数週間前に比べ緩んできているが、第1~第3腰椎の特に左は硬さが連なり、鉄板が入っているような感触。この付近は腎臓と関連がある。
第10回目 10月18日
腰にうずくような感覚があって以前とは違うように本人は思える。左大腿の裏に坐骨神経痛があった。
腰部は第2腰椎の左側を中心に治療をする。腰部の鍼は全体的に深く、当たって硬く、その後、ネバリがでてきて重い感触。仙骨部は鍼が負けているぐらい硬かった。
第11回目 11月2日
昨日は腰がうずいたが、続かず直ぐに治まった。腰は左のほうがうずく感じは強い。
腰部は第1~第2腰椎にかけて板状の硬さがある。第5腰椎の左は外側に向って硬さが伸びる。左腰部が緩んでくるまで時間をかけた。
第12回目 11月16日
腰は朝、起床時に少し痛むが直ぐに痛みは治まる。坐骨神経痛は左の臀部~大腿の裏にかけて、週に1回ぐらいある。
腰部に治療時間の7割をあて、徹底的に左腰部を緩めることに努めた。
第13回目 11月30日
今週、高尾山に2回、登った。登山後に体がつったが翌日は楽になる。腰痛はなかった。
今日も腰部に時間をかけたが、前回までよりも右腰のほうが硬さがある印象。鍼が浅い所でつまり、突破して一気に深く入っていくことが多かった。
第14回目 12月14日
2月のパタゴニア旅行に向けてウォーキングを続けている。特に腰が痛むことはない。骨密度の検査を受けて30代の数値だった。
以前のような左腰部の硬さがだいぶ和らぎ、その分、右腰の硬さが気になるとのこともあり、右腰に重点を置いた。
第15回目 12月28日
町内会の手伝いで8時間、立ちっぱなしで、左右の臀部が重だるくつらかった。坐骨神経痛も左臀部にあったが、今日はあまり感じない。
肩部がはっきりとした鍼の当たりで最近としては肩部、肩甲骨内側に張りと硬さがあった。腰部は、深いところで、しっかりとした鍼の感触を得る。先週より左腰が硬く、なにか無理をすると左腰に負担がかかる体の使い方をしているように思える。
患者さんご自身が感じられた変化
腰痛は若いころからあって、長い付き合いとなっています。今回は海外のトレッキングツアーに申し込んだ後に、ツアーに参加できるかどうか不安になるほど腰が痛くなりました。ツアーは初診から1ヶ月後であったため、なんとか無事にツアーに参加できるよう治療をお願いしました。鍼治療を受ける度に、腰は楽になり、ツアー出発日までに、日常生活では腰痛で不安になるようなことはなくなっていました。それでも、無理をすれば腰は痛くなる状態でしたので、用心しながらでしたが、ツアーにも無事に参加することができました。ツアーの1ヶ月前は、ツアーはキャンセルするかどうか迷うほどでしたので、無事に参加できて本当に助かりました。
帰国後はまた別のトレッキングツアーの計画に向けて腰を治して良い準備ができたらという想いで、鍼治療を続けています。
考察
長年の腰への負担が蓄積していて、特に腰部左側の連なる硬さは根深いものがありますが、徐々に緩む方向にあり、ご本人も日常生活で問題なく過ごせ、海外旅行にも無事に出発されました。海外旅行に行きたいというご本人の強い希望が体を治そうという良い動機付けになっていると思います。こういった体を治して自分は何をしたいのか、という目標が明確な方ほど快方に向える気がします。
この患者さんは、初診時の目標であった南米のトレッキングツアーに無事に参加されました。帰国後も治療を続けられていて、半年後の別の海外ツアーに参加される予定で、益々治療に積極的に取り組まれ、普段の生活でもご自分で気をつけるべきことを考えながら次の目標に向っておられます。
今後の治療は腰部の硬さをとることが最優先ですが、それに伴って、肝機能や消化器系の症状にも効果があるよう、治療を継続しています。
元々、活動的な方なので、腰痛などがなくなると、直ぐにかなり腰に負担になるようなことをしてしまう傾向があります。もう少し目標に向って徐々に負荷を上げていくような気持ちで取り組んでいただけるとさらに良いと思います。
カテゴリー:腰痛